< インタビュー >

大漁レストラン旬(とき)

荒山正志 店長・料理長

 昨年の改装をきっかけに松浦魚市の新事務所棟に新しくオープンした「大漁レストラン旬(とき)」。このお店の看板メニューもやはりアジフライだそう。多い時には30分で30食が売り切れるという繁盛店だ。田平出身で以前は自ら平戸市場から仕入れも行なっていたという業界にも詳しい荒山店長にお話を伺った。

 本日はアジフライの聖地として注目されている松浦魚市のお食事処の話を、生産者としてお聞かせいただければと思います。まずは松浦市長がアジフライの聖地宣言をしたことで何かお店側に変化はありましたか?

 やっぱりお客さんが増えましたね。アジフライメインの方が。NHKや福岡のタウン誌からも取材を受けたりしているのでメディアの反響もあってのことだろうな、と思います。今の松浦市長の友田市長が立ち上げてくれて良かったですよ。銚子でもアジが多く水揚げされますよね。だけど先手必勝で松浦が聖地になりましたから。経済効果もやっぱりあると思いますよ。近年は魚離れが危惧されているなかで、行政が主導でやってくれることはありがたいです。アニサキスも心配されていますからね。このいい流れが一発で終わるのではなく長く続いてくれればいいんですけど。

 そうですね。西日本魚市の松本常務とも先ほどそのお話をしていたのですが、皆にもっと浸透させていくことが大事ですよね?このお店の看板メニューはもともと聖地宣言が発表される前からアジフライだったのでしょうか?

 はい、そうです。聖地宣言が出される前からアジフライがメインのお店でした。それまでは弊社の姉妹店でアジフライを提供していて、松浦魚市場が新しく改装されたタイミングで昨年の6月からこの店舗でやっています。

 アジフライの作り方は前の店舗で作っていたときから同じ何かこだわった作り方とかあったりするんですか?

 ずっと同じですよ。シンプルに三枚におろして身の骨を抜いています。開きにするとどうしても背のほうに骨が残ったりしますから、年配の方やお子さんまでが安全に食べられる形で提供しています。味つけもシンプルに塩コショウのみです。何かこだわりが言うとするならば、その日の分はその日のうちに調理してしまいます。うちは、ノンフローズンでその日水揚げされた魚を捌いて、提供できる分の魚がなくなったら終了という感じです。

 ノンフローズンだとこのような時化の時期は大変ですよね。

 そうなんですよ。冷凍ものは使わないと決めているのでこういう時化の時期は本当にどうしようかと思いますね。本当に水揚げがなかったら正直にお客さんにもないとしか言いようがない。冷凍もののアジフライだと身が固くなりますしフワッとはならないですよ。長崎県民の人はみなさん食べたことがあるかもしれませんが県外の人ならまずいないでしょうねえ。この前来たお客さんなんかは、こんなに身の厚いアジフライは初めて食べたとか今まで食べていたのは何だったんだとか言って驚かれていました。ここは市場ですからこちらとしてもやはり鮮魚を出したいですよね。通常のお店だと、お刺身としては提供できないような日が経ったものや色味が悪くなってきたものとかをフライにしますよね。うちはお刺身として提供できるぐらいの新鮮なものをフライにしています。市場の中のレストランとしてやっぱりそこをお客さんも期待して来ますからね。

 先ほどいただいたアジフライ定食は身がフワフワで美味しかったです、やっぱりこの時期のアジはよく脂がのっていました。旬アジ定食は8月までと書いてありますが(壁に貼ってある張り紙)9月、10月はどうなんですか?

 一応8月までと明記していますが、その年によってアジも違いますからね。昨年は遅くまで脂がありましたので旬アジ定食は8月過ぎてもまだ提供していました。自分がまず食べて確認してからどうするか決めています。脂がなくなってきたらもう旬アジはやめて10月から旬サバをします。旬サバ定食は塩焼きになりますね。

 こちらとしては冬の時期のサバもPRしていただければありがたいなと思うのですが、どうお考えですか?

 最近のサバは脂がなあ…とは思うのですがお客さんはそれでも美味しい美味しいと食べますからね。塩焼きを食べるとサバの脂が分かりますね。特に今はノルウェー産のサバが出回っているのでお客さんもその脂感に慣れている人が多いですもんね。脂の乗り方がこっちと全然違いますから。こちらのサバはさっぱりとした脂です。太平洋側で獲れるサバもノルウェー産のサバと同じ感じの脂で、仙台のほうのサバもけっこう脂っぽいですもんね。塩焼き一つ食べるだけでもういいかなと思うくらいです。済州島のサバが今はあんまり手に入らないので残念ですね。

 料理人の方はやはり済州島のサバをよくご存知ですね。関東の方でもサバに詳しい方は済州島のサバについては言っていますもんね。いまは向こうのほうでは漁ができませんから、私達は済州島のサバを食べたことがない世代ですがよく話を聞くので食べられないのが残念です。

 朝は市場で働いている従業員の方も食べに来られますよね?

 はい、従業員の方の日替わり朝食分がありますので朝の4時から仕込みを始めますね。毎日4品くらいのメニューをローテーションしています。ここは普通の市場と違って遠洋とか小網がほとんどで魚種が少ないのでたまに魚がない場合には、知り合いに持って来てもらったりもしていてお世話になっていますし朝食が昼食みたいなものですから仕事終わりに焼肉とかね、いいですよ。

 肉体労働した後ですもんね。船の乗組員も沖でずっと魚を食べていますから陸で魚を食べたがらないんですよね。土日は観光客の方も増えるのでもっと忙しくなるんじゃないですか?

 この前の土曜日は遠まきが休みで、その分日曜日がすごく忙しかったです。平日よりも日曜は多めに仕込んでいるのですが、こっちの手が回らないので旬アジ、アジフライ定食で100人前くらいまでしかできないですね。そうなったらいくらお客さんに来ていただいても売切れ御免になりますね。一番早かったときは30食が30分でなくなりました。回転率は上げたほうがいいですから、お客さんにいかに早く提供して食べてもらうかが重要ですね。従業員の方たちの朝食が一段落する頃に次の仕込みを始めているので午前中から終わるまで休む暇ないですね。

 大人気ですね。やはり一番新鮮な魚が手に入る場所ですからね。今日は貴重な時間を割いてお話を聞かせてくださりありがとうございました。

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